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  専門看護師・認定看護師活動推進委員会報告

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公益社団法人日本看護協会が定めている資格制度に基づき、老人看護専門看護師は、複雑で解決困難な看護問題を持つ高齢者、家族及び集団に対して卓越した看護を実践し、関係者からの相談を受け、必要なケアが円滑に行われるために調整を行い、高齢者や家族の権利を守るための倫理調整、ケアを向上させるため教育的役割を果たし、さらに実践の場における研究活動を通して老年看護の質向上に寄与しています。また、認知症看護認定看護師は、認知症者とその家族および集団に対して、高い臨床推論力と病態判断力に基づき、熟練した看護技術及び知識を用いて、水準の高い看護実践を行い、指導相談を通して看護現場における認知症ケアの広がりと質の向上を図るために日々活発に活動しています。
一般社団法人老年看護学会はこれらの資格の誕生に関わっており、現在は専門看護師・認定看護師活動推進委員会がこれらの活動を一層活発にするために研修などを企画・運営することにより支援しています。
その一環としてCNSCN活動推進委員会では、老人看護専門看護師、認知症看護認定看護師の活動について会員・非会員を問わず広く知っていただき、理解を深めたいと考えHPに公表していくこととしました。概ね2か月に1回、報告内容を更新していく予定です。専門看護師、認定看護師の活動について理解を深めていただくとともに、看護実践の課題解決のヒントとして役立てていただければ幸いです。

Vol.24

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Vol.2

Vol.1

Vol.24-1
住み慣れた地域で最善のケアにつなぐ  ~多職種との協働を通して~
2013年認定 認知症看護認定看護師
一般財団法人 神戸在宅医療・介護推進財団 認知症対策課
認知症初期集中支援チーム コーディネーター
久保田真美

プロフィ-ル写真

私は、一般財団法人 神戸医療介護推進財団に所属し、神戸市からの委託事業である認知症初期集中支援チーム(以下、チームとします)で活動しています。
チームは、認知症サポート医、保健師や看護師、作業療法士、社会福祉士、精神保健福祉士等の医療系福祉系の専門職で構成されています。対象者は、認知症の疑いがあり、生活に支障をきたしている方や、家族や医療・介護サービスを提供する支援者が対応に苦慮している認知症の方です。主に、地域包括支援センター等からの相談を受け、情報を整理した後、チーム員2名で対象者や家族のもとを訪問してアセスメントをします。その後、チーム員会議を開催して、関係機関やチーム員とともに支援の方向性を定めます。対象者の意思が尊重され、住み慣れた地域で生活が継続できるように、適切な医療や介護サービスにつなぎ、概ね6か月でチームの介入は終了になります。
昨今、身寄りのない独居の高齢者や老老世帯の増加、キーパーソンがなんらかの疾患を抱えているケース、経済的困窮に直面しているケース、ゴミが山積みで悪臭が漂うケースなど、抱えている問題が複合化、深刻化してきています。誰もが助けや支援を求めているわけではなく、「人の世話にはなりたくない。放っておいてほしい。」と病院の受診や支援の導入を拒否されることも珍しくはありません。本人の視点に立ち、これまでの生活歴や環境から本人の思いを考え、訪問を重ねるなかで関係性を築き、最善な生活や支援を本人や家族とともに考え、医療や介護サービスにつなげていきます。しかし、やっと打ち解けてくれた矢先に不慮の事故で亡くなった方や、救済のために入院したはずが病院でベッドから転落して骨折したのを機に自宅に帰れなくなった方もおられました。そのような時は、後悔や無力感に苛まれますが、仲間と共に振り返りを行い、再度前を向いていけるように努めています。
地域で多職種と活動していると、認知症ケア経験や地域での活動が数十年のプロフェッショナルな支援者や、人生経験豊かで超越的な人間力を有している支援者に出会います。時に劣等感でいっぱいになり、「認知症看護認定看護師」の肩書を重く感じることもありますが、人との出会いに感謝しながら、自己研鑽に努めたいと思っています。
久保田 真美(くぼた まみ)
病院、訪問看護ステーション、若年性認知症支援センターを経て、2023年度より現職。2013年に認知症看護認定看護師の認定を受ける。
Vol.24-2
患者さんがより自分らしく過ごすための多職種チームの活動
2012年認定 老人看護専門看護師
国立病院機構七尾病院
田本奈津恵

プロフィ-ル写真

令和6年1月1日M7.6の激しい揺れ、家屋の倒壊、地盤の隆起、大津波警報、一瞬にしてのどかな田園風景を激変させた能登半島地震が発生し、仕事初めは、被災患者さんの受け入れから始まりました。まだ日常を送れない日々ですが、「能登はやさしや土までも」の言葉のようにお互いに助け合い、声をかけ合いながら過ごしています。七尾病院は、政策医療を担う病院で「笑顔と誠実な医療を通じて世の中に貢献する」を理念とし、主に神経難病や慢性疾患、重症心身障害者の方が入院され、大半の方が高齢者です。みどり豊かな能登島や波穏やかな七尾湾、和倉温泉街が取り戻せるよう頑張っています。
 私は、認知症ケアや退院支援、看護研究活動など病棟スタッフと共に取り組んでいます。認知症ケアでは、転倒転落防止や食事摂取量の低下、無気力、せん妄などの相談が多くあり、 多職種チームで行う院内デイケア「ほほえみサロン」を実施しています。認知症予防と対応についてのプログラムを週1回行い、体操や呼吸法、カラオケ、園芸療法に着目し生活の質向上に努めています。震災で被災された患者さんが避難所、病院と住まいを移す中で、新聞を読む、好きなコーヒーを飲む日常を取り戻せたこともありました。また、なかでも生け花は、病院周囲や職員の自宅庭に咲いている花を使い、色や香り、葉や枝、冷たい水等に触れることで参加者の顔がとても生き生きと輝くひと時です。患者さん各々で楽しみにしている内容は違います。サロン参加後は、声が出て思いを伝えられる、笑顔が増えた、見当識が保たれる、服薬管理に繋がった、身体拘束解除などの変化がありました。感染対策を行いながらコロナ禍でも継続し、震災後も病棟から開催依頼があり継続しています。デイケアでは、普段と違う表情や姿があり、ご家族も大変喜ばれ病棟看護師や管理者と共に看護の楽しさややりがいを感じています。
また、看護研究活動についても多職種チームで取り組んでいます。昨年のテーマは、排便、拘縮予防等であり、学会発表への支援ができました。身近なリサーチクエスチョンを研ぎ澄まし研究がまとまっていく過程を通し、スタッフ自身が様々な考え方やスキルを高めていく様子から私自身も刺激を受け、新たな知見に触れる面白さを体感する日々です。
今後も患者さんがより自分らしくすごせるよう興味・関心を探ること、日々のケアを研究に繋げ患者さんの思いを大切にしたチーム活動を行っていきたいです。
田本奈津恵(たもとなつえ)
1995年国立病院機構七尾病院入職、2012年老人看護専門看護師の認定を受ける。