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研究倫理ガイドライン
前文
日本老年看護学会は,老年看護学の進歩発展と看護実践の質向上に寄与することを目的に,1995 年(平成7 年)に設立された.2003 年(平成15年)には,会員の行う看護実践・教育・研究・社会活動において遵守すべき責務を明らかにした「日本老年看護学会倫理綱領」を定めた.2012 年(平成24年)には,本会員の行う研究に参加する人々の権利を守るとともに会員が遵守すべき倫理指針として「日本老年看護学会研究倫理ガイドライン」を作成した.そして,学会会員による研究活動が,「日本老年看護学会倫理綱領」「日本老年看護学会研究倫理ガイドライン(以下,ガイドライン)」並びにその基盤となる人権尊重の考え方や倫理指針に基づいて,適正に行われるかどうかを審査することを目的として,2018年(平成30 年)に「研究倫理審査委員会規程」に基づく倫理審査が組織化された.
さらに,関係省庁から新たに示された研究倫理指針等に準拠して,責任ある研究を行い,人々の健康と福祉,社会環境の安全・安寧・持続性に貢献していく研究者としての姿勢を強調するため,2019年(平成31 年)2 月,ガイドラインを改訂した.
今回は,国が示す研究倫理指針の改正をふまえ文言等を修正するとともに,会員各位が本学会の意図する研究倫理への理解を深め,適切な研究活動に取り組めることを目的に改訂を行った.
1. 基本的考え方
1.1. 目的と適用範囲
1.1.1 本ガイドラインは,「日本老年看護学会倫理綱領」にもとづき,全会員が研究を行う者,もしくは論文掲載の採否を判定・審議する役割を担う者としての責務を理解し,“責任ある研究行為”を行うこと等を目的として,研究の全プロセスにおける倫理的配慮についての基本的考え方とその活用方法を示すものである.
1.1.2 本ガイドラインは,会員の行う研究活動のうち,日本老年看護学会の事業・活動として行われる研究,日本老年看護学会誌「老年看護学」に投稿・掲載される論文並びに日本老年看護学会学術集会への抄録の投稿と発表,査読プロセスに適用するものとする.
2. 研究を行う会員が遵守すべき基本原則
2.1. 研究の社会的及び学術的意義・科学的合理性及び倫理的妥当性の確保
2.1.1 研究は,人々の健康と看護学の発展に資する社会的及び学術的意義を有するものである.研究活動は,専門知識に基づいた科学的合理性及び倫理的妥当性のあることが認められるものでなければならない..
2.1.2 研究を行う会員は,研究テーマに関係する法令や指針等を遵守し,所属機関もしくは調査協力機関等において,倫理審査委員会の審査及び研究機関長の許可を受けた研究計画書に従って,適正に研究を実施しなければならない.ただし,研究計画が個人情報を取り扱わない場合等一定要件を満たし,研究倫理審査委員会等の付議を要しないと判断した場合は,この限りではない.
2.1.3 研究を行う会員は,研究実施の適切性もしくは研究結果の信頼を損なう事実や情報を得た場合には,速やかに適切な対処をとらなくてはならない.
2.2. 研究対象者等への配慮
2.2.1 研究を行う会員は,研究対象者又はその代諾者等(以下,研究対象者等)の生命,健康及び人権を尊重して実施しなければならない.
2.2.2 研究を行う会員は,研究を実施するに当たっては,原則として,研究対象者等からインフォームド・コンセント(十分な説明を行い,同意を得ること)を受けなければならない.また,必要な場合はインフォームド・アセント(理解力に応じた分かりやすい言葉で説明を行い理解・賛意を得ること)を受けなければならない.
2.2.3 研究を行う会員は,研究対象者等及びその関係者からの相談,問い合わせ,苦情等(以下,相談等)に適切かつ迅速に対応しなければならない.
2.2.4 研究を行う会員は,研究で知り得た情報を,研究開始から研究終了後においても,正当な理由なく漏洩してはならない.
2.2.5 研究を行う会員は,研究対象者等に生じる負担や不利益と対応策並びに研究参加により得られる利益を明らかにした上で,十分に配慮し,研究を進めなければならない.
2.2.6 研究を行う会員は,研究対象者等の人権尊重の観点又は研究実施上の観点から重大な懸念が生じた場合には,速やかに適切な対処をとらなければならない.
2.3. 研究を支える社会への説明責任
2.3.1 研究を行う会員は,自らが携わる研究の意義と役割を公開して積極的に説明し,その研究が及ぼす影響や起こしうる変化を評価しなければならない.
2.3.2 研究を行う会員は,研究結果を中立的・客観的で検証可能なデータ・資料として公表するとともに,その内容について吟味・批判を受けて,社会の共有財産としていかなくてはならない.
2.3.3 研究を行う会員は,研究の質及び透明性を確保しなければならない.
2.4. 責任ある研究行為を行っていくための教育・研修
2.4.1 研究を行う会員は,責任ある研究行為を行っていくために,法令・指針等の遵守に加えて,研究者自身の正しい判断力と,正しくありたいという誠実な姿勢をもつよう努めなければならない.
2.4.2 研究を行う会員は,研究の実施に先立ち,研究に関する倫理並びに研究実施に必要な知識・技術に関する教育・研修を受けなければならない.また,研究期間中も適宜継続して,教育・研修を受けなければならない.
3. 研究プロセスにおける倫理
3.1. インフォームド・コンセント等
3.1.1 侵襲を伴う介入研究や人体から採取する試料を用いる研究,新たに『要配慮個人情報※』を取得する研究は,文書により事前に十分に説明し,文書により自由意思に基づく同意を受ける方法で,研究対象者等からインフォームド・コンセントを受けることを原則とする.ただし,一定の要件を満たす場合は,文書による説明あるいは口頭による説明とその記録,もしくはオプトアウト(研究実施の情報を通知・公開し研究対象者等が研究対象となることを拒否できる手続き)にてインフォームド・コンセントを受けることが可能である.
3.1.2 なんらかの理由により研究対象者にインフォームド・コンセントを実施できない場合,たとえば認知症の人,意識障害や危篤状態にある患者,死者等に対しては,代諾者等(家族等の研究対象者の法定代理人等で,研究対象者の意思及び利益を代弁できると考えられる者)からインフォームド・コンセントを受けることができる.
3.1.3 認知機能の低下等により研究参加への決定能力が低下している研究対象者に対しては,代諾者等からインフォームド・コンセントを取得するとともに,研究対象本人の決定能力の程度に応じて,研究への参加について理解を得たり,本人の自己決定権を最大限保障したりする努力・対応(インフォームド・アセント)をする必要がある.
3.1.4 研究を行う会員は,インフォームド・コンセントの手続き及び研究対象者等が研究参加を拒否することができる権利等,倫理的配慮について研究計画書に明記する.詳細は,「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(文部科学省・厚生労働省・経済産業省)等を遵守する.
3.2. 個人情報等の保護
3.2.1 研究を行う会員は,研究活動の全般にわたり個人情報を保護するために,研究対象者を識別することができないように個人情報を加工して,当該個人情報を復元することができないように措置を講じる必要がある(匿名加工情報).ただし,自治体を対象とした場合又は公表について研究対象者等の承諾がある場合等はこの限りではない.
3.2.2 研究対象者を識別する必要がある研究では,対照表を作成し仮名加工情報として,適切に管理する必要がある.
3.3. 重篤な有害事象への対応
3.3.1 侵襲を伴う研究の実施において重篤な有害事象の発生を知った場合には,研究対象者等への説明等,必要な措置を講じるとともに,速やかに研究責任者に報告しなければならない.
3.3.2 研究責任者は,侵襲を伴う研究の実施において重篤な有害事象の発生を知った場合には,速やかに,その旨を所属機関の長に報告するとともに,適切な対応を図らなければならない.また,速やかに当該研究の実施に携わる研究者等に対して,当該有害事象の発生に係る情報を共有しなければならない.
3.4. 利益相反
3.4.1 研究活動は,個人的な考慮や利害関係によらず,科学的な根拠と判断及び公共の利益に基づいて行われる必要がある.
3.4.2 研究を行う会員は,研究活動全般において,その研究の資金提供者等の恣意的な意図に影響されてはならない.
3.5. 研究データの管理
3.5.1 研究データは,一定期間,後日の利用・検証に堪えるよう適切な形で管理・保存しなければならない.なお研究データとは,研究活動において実施する観察・実験に伴い発生又は使用するもので,資料(文書,回収した質問紙,数値データ,画像等)と試料(人体から採取した標本,実験試料等)がある.
3.5.2 オリジナルの電子データは,適切なバックアップ等の作成により保存しなければならない.改変もしくは新たなデータを追加する場合は,コピーを利用し,オリジナルのデータの改変は加えない.
3.5.3 研究記録は,後日の利用・検証に役立つよう記載し,かつ,事後の改変を許さない形で作成して,研究活動の一次情報記録として適切に保存しなければならない.なお研究記録とは,観察・実験をはじめとする研究活動においては,その過程を観察ノート等の形で記録に残すものとする.
3.5.4 研究データを収集する際は,調査手続きやその過程を詳細に示しておく必要がある.
3.5.5 電子データファイルは,パスワードプロテクション等のセキュリティ対策を講じたうえで慎重に取り扱う必要がある.ただし,研究対象者等の承諾がある場合にはこの限りではない.
3.5.6 電子データ類は,使用するコンピュータが完全にインターネット環境から独立している場合を除き,ファイル交換ソフト,スパイウェア等の影響を排除できるような配慮を行う必要がある.
3.5.7 研究データや研究記録の物理的な管理は,施錠可能な引き出しや棚等に収納して,第三者の目に触れることがないようにしなければならない.
3.5.8 研究データの保管期間は,試料については,原則として,当該論文等の発表後5年間とする.資料は,原則として,当該論文等の発表後10 年間とする.ただし,法令等に定めのある場合はそれに従うものとする.
3.6. 事例を含んだ研究における注意
3.6.1 事例を含んだ論文を執筆する場合,あるいは事例を含んだ公表をする場合,前もって研究対象者等から文書で同意を得ることを原則とする.また,事例使用について研究対象者等から同意を得ている旨を明記する.
3.6.2 事例を用いた研究を行う場合は(死者を含む),事例の公表により研究対象者等が特定されることで不利益が生じることを防ぐため,匿名性を確保する必要がある.ただし,公表について研究対象者等の承諾があり,その社会的必要性が認められる場合は,この限りではない.
3.6.3 事例の匿名性を確保するには,研究対象者等が特定できないように,援助経過や援助内容を,研究の趣旨が変わらない程度に最低限の加箪修正を行う必要がある(匿名化).また,その場合には,事例を加筆修正している旨を明記する必要がある.
3.6.4 研究対象者等から実名公表の同意を得ている場合にはその旨を明記する.
3.6.5 介入継続中のケースを「公的に発表」する場合は(学会発表や論文等),原則として,研究対象者等の療養への影響や個人情報の暴露等の関係から,介入が終了後,もしくは大きな区切りを迎えたところで行うことが推奨される.
3.6.6 論文や事例研究症例報告としての適正を欠く恐れがある事柄(係争中の事件や被援助者と援助者の間に利害関係が生じる可能性のあるもの等)を題材として取り扱うことは極力避ける.
3.6.7 他の研究者が執筆した事例を使用する場合,引用を明記する.
4. 共同研究における倫理
4.1. 共同研究における姿勢
4.1.1 共同研究とは,同じ施設機関内の同一・多領域分野での協力関係のほか,異なる施設機関をまたいだ同一・多領域分野での協力関係にもとづく研究活動をいう.従って,共同研究に当たっては,共同で研究することが必要不可欠である研究目標を明確に提示しておくことが必要となる.
4.1.2 共同研究の組織の運営及び会計は,民主的に行われなければならない.事前に共同研究者の中で役割を協議し,納得して共同研究を行うことを基本とする.構成員の一部に対する過重な負担や,役割分担等が不明瞭なものであってはならない.
4.1.3 複数の研究者や研究室が関わる場合があるため,それぞれの役割の他に,研究成果の管理,起こり得る方向性の変更・転換とそれに伴う影響,共同研究の終了の判断等について,相互に了解しておく必要がある.
4.2. 研究データに対する権利
4.2.1 研究データ使用の権利は,そのデータを直接集めた人だけでなく,研究に学術的な貢献をした人や組織全てが何らかの権利を保有していると考えられる.研究発表においては,そうした関係者の権利にも充分に配慮する必要がある.
4.2.2 研究データの帰属先は,その研究がどのような資金源に基づいて異なる場合があるため,所属施設のデータの帰属・管理に関する規定に準じる必要がある.
4.3. オーサーシップ
4.3.1 論文著者となる資格(オーサーシップ)に対する考え方は,研究領域・研究分野等によって異なることがあるため,共同研究者同意で事前にすり合わせを行い,分かりやすい基準を設けておく必要がある.
4.3.2 研究に学術的な寄与をした個人には,その研究を発表する際連名著者となる権利がある.この学術的な寄与とは,一般的には,研究計画の立案,分析方法の決定,事例の提供や資料作成データの解釈,論文の執筆等に参加することを意味する.ただし,統計ソフトヘのデータ入力や分析作業の実施等の単純作業は,通常,学術的な寄与とはみなさない.
4.3.3 オーサーシップには「責任」が伴うことを踏まえた上で,誰が共同研究者からのデータ等をとりまとめて実際に論文を執筆するのか,誰を謝辞に含めるのか等について,論文の執筆を始める前までに関係者全員の合意を得ておくことを基本とする.また,連名著者になるか否かについて,著者は本人の意思を確認する必要がある.
4.3.4 連名著者は,研究への寄与が大きい順に姓名を列挙する.ただし,その他の方法の提示などがある場合には,それに従う.寄与が同等の場合は,その旨,脚注に記して説明することができる.
4.3.5 研究への寄与が単純作業のみである場合又は寄与がそれほど大きくない場合は,謝辞・脚注等で謝意を表するだけにとどめることができる.
5. 論文執筆・投稿上の倫理
5.1. 不正行為の禁止と対処
5.1.1 ねつ造
5.1.1.1 存在しないデータや研究結果等をねつ造することは,厳に禁止されるべきである.
5.1.1.2 代表的なデータのみを示す場合には,その選択の客観的な基準を明記する必要がある.
5.1.2 改ざん
5.1.2.1 研究データの一部を改ざん並びに分析・解釈を容易にするために特定のデータの恣意的な削除等,得られた研究結果を真正でないものに加工することは厳に禁止されなければならない.
5.1.3 剽窃・盗用
5.1.3.1 他者の行った研究成果を,そのまま,あるいはわずかに変えただけで,出展を明記せずに自分の論文に使用した場合,他者の得た知見を自説として発表したことになる.これは盗作もしくは剽窃として糾弾・告発される行為であり,厳に禁止されるべきものである.
5.1.4 不正行為への対応
5.1.4.1 投稿論文あるいは掲載論文において,ねつ造,改ざん,剽窃・盗用等の不正行為の疑義が生じた場合,適切な手続きに則り,調査が行われ,調査結果は公表されるべきものである.
5.2. 引用の明記
5.2.1 研究とは先行研究の上に新たな知見を積み重ねていくことである.そのため,研究においては,参考にした先行研究を明記するとともに,先行研究が示す知見と自らが明らかにした知見を区別して述べる必要がある.
5.2.2 先行研究からの知見を自らの研究に援用する場合,その先行研究について原著者名,文献,出版社,引用箇所を明記しなければならない.
5.2.3 長文の引用は原則として避けるべきである.やむを得ず必要な場合は出版社もしくは原著者からの承諾を得る必要がある.また,図表の転載等についても同様に出版社もしくは原著者の承諾を得る必要がある.ただし,白書等の公表データに関しては,この限りではない.
5.2.4 他の研究で使用された調査用紙(質問紙)の全部又は一部を使用する場合には,その旨を明記し,出典を明らかにする必要がある.
5.2.5 引用を行う場合には,原典を確認する必要がある.
5.3. 二重投稿の禁止
5.3.1 投稿した研究論文を,その採択が決まらないうちに他誌に投稿することは「二重投稿」であり,厳に禁止されるべきものである.
5.3.2 すでに出版物に掲載されている論文と実質的に同じ内容の原稿を投稿することもしてはならない.
5.3.3 これらの二重投稿が明らかになった場合,投稿論文は却下される.
5.4. 分割投稿に関する注意
5.4.1 単一の目的をもって行った研究を複数の研究論文として分割して投稿することは分割投稿(「サラミ投稿」といわれる)となる.複数の論文にする必要性を十分に吟味し,その理由を説明しなければならない.
5.5. 自己剽窃・自己盗用に関する注意
5.5.1 自分が以前に公表した論文や記事等を,他に掲載されたことを読者にわかるように明示せず,新しく書いた論文や記事の中で再利用することは「自己剽窃」「自己盗用」である.すでに他誌に投稿あるいは公表した論文をもとにして本学会において研究論文等として発表する場合は,自著論文を引用し出典を明示する必要がある.
5.5.2 前回発表した研究論文の成果を踏まえて,次の研究論文を執筆し,投稿する場合にも,自著論文を引用して,前著と同一でない旨を明記しなければならない.
5.5.3 投稿した原稿と類似した内容の原稿をすでに出版している場合や,他誌に投稿している場合には,自著論文から重要部分を再掲することも剽窃とされる場合があるため注意しなければならない.
5.6. 研究助成等の明記
5.6.1 組織や団体から資金の提供を受けて研究を行った場合は発表時あるいは研究論文に研究助成を受けた組織や団体の名称,課題番号等を明記する.
6. 査読の倫理
6.1. 守秘義務
6.1.1査読者は原稿が公刊される前に,その内容を自分の研究に利用したり,第三者に明かしたりしてはならない.
6.2. 建設的な批判
6.2.1 査読者は,査読結果に対する著者から出された疑問や反論に対し,検討しなければならない
6.2.2 査読は,著者の人格を傷つけるものであってはならない.査読対象の論文の優れた点を評価すると共に,問題のある点についても建設的な立場から指摘し改善案を示すようにする.
6.3. 適格性
6.3.1 査読は,原稿の内容にできるだけ熟知している査読者が,複数で行うこととする.
6.3.2 査読者は,原稿の内容を見て,同じ施設,指導の立場にあるなど利害が抵触して,自分は評価を行うには不適格であると判断したときには,査読を辞退し,原稿を返却しなければならない.
6.4. 不偏性・公正性
6.4.1 査読には投稿された研究論文・抄録の評価を含むため,査読者は全文を読了したうえで公正・客観的に評価を行い,かつ指摘する内容は明確に分かりやすく行わなければならない.
6.4.2 査読者が論文著者と競争関係にある場合や異なる学説・思想・信条を持つ場合であっても公正な査読に努める.もし審査に影響を与えるような関係がある場合には,自ら辞退する.
6.5. 利益相反の開示
6.5.1 査読者は,公正で客観的な査読を行う上で妨げとなり得る利益相反がある場合は,編集委員へ開示する.
6.6. 即応性
6.6.1査読にあたり査読者は,指定された一定期間内に査読を終えるように努める.
7. 社会通念上の倫理
7.1. 研究における倫理性
7.1.1 人を対象とした研究において,人権の侵害や差別を助長するおそれのあること,あるいは社会通念や法に抵触するおそれのあるものは取り上げるべきではない.
7.1.2 調査用紙(質間用紙)の文言は,対象者の名誉やプライバシー等の人権を侵害することのないように配慮して,作成されなければならない.
7.2. 差別を助長する用語の使用の禁止
7.2.1 口頭発表・研究論文の執筆等に当たって,研究目的を外れて社会的に不適切と考えられる用語を用いてはならない.ただし,引用文献である原典において用いられている場合はこの限りではないが,その場合であっても,その旨を明記し,不必要な人権侵害・差別が起こらないように配慮する必要がある.
7.2.2 会員は,差別的表現とされる用語や社会的に不適切とされる用語について理解を深めなければならない 本ガイドラインの改訂にあたり,次の資料を参考にした.
1) 文部科学省,厚生労働省,経済産業省「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針 ガイダンス」令和5年4月17日一部改訂.
2) 文部科学省,厚生労働省,経済産業省「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」令和5年3月27日一部改正.
3) 日本看護系学会協議会「論文投稿ハンドブックー不適切な行為を避けるためにー ver.1.0」2021年3月.
4) 日本学術振興会「科学の健全な発展のために-誠実な科学者の心得-」2015年2月.
5) 日本看護協会「看護研究における倫理指針」2004 年7月7日.
6) 国際看護師協会「看護研究のための倫理指針」2003年.

(令和6年3月7日 理事会承認)

※脚注(用語の説明)
・『個人情報』は,生存する「個人に関する情報」であって,「当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ,それにより特定の個人を識別することができるものを含む.)」又は「個人識別符号が含まれるもの」(個人情報保護法第2条第1項第1号,第2号).
 →「個人に関する情報」とは,氏名,住所,性別,生年月日,顔画像等個人を識別する情報に限らず,ある個人の身体,財産,職種,肩書等の属性に関して,事実,判断,評価を表す全ての情報であり,評価情報,公刊物等によって公にされている情報や,映像,音声による情報も含まれ,暗号化等によって秘匿化されているかどうかを問わない.
 →『個人識別符号』とは,特定の個人の身体の一部の特徴を電子計算機能の用に供するため変換した文字,番号,記号その他の符号であって,当該特定の個人を識別することができるものをさす(個人情報保護法第2条第2項).
・『仮名加工情報』は,措置を講じて他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報である(個人情報保護法第2条第5項).
・『匿名加工情報』は,措置を講じて個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報で,当該個人情報を復元することができないようにしたものである(個人情報保護法第2条第5項).
・『個人関連情報』は,生存する個人に関する情報であって,個人情報,仮名加工情報及び匿名加工情報のいずれにも該当しないものである(個人情報保護法第2条第7項).
・『要配慮個人情報』は,個人情報のうち,本人の人種,信条,身分,病歴,犯罪の経歴,犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別,偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれるものである(個人情報保護法第2条第3項)